未だ第一線で活躍するPaul McCartney(ポールマッカートニー)|現在の70年代ブームを牽引する生ける伝説

  • 2018.12.06
  • Pop
未だ第一線で活躍するPaul McCartney(ポールマッカートニー)|現在の70年代ブームを牽引する生ける伝説
British musician Paul McCartney performs during the “One on One” tour concert in Porto Alegre, Brazil October 13, 2017. REUTERS/Diego Vara

未だ第一線で活躍するポールの待望の新作

ポールが帰ってきた、2018年、東京ドームを皮切りに、両国国技館、ナゴヤドームでコンサートを行った。9月17日にはワールド・ツアー「フレッシュン・アップ」をカナダのケベック・シティにてスタート。古参のファンに贈るLet it BeやHey Jude(天国のJohnも喜んでいるはずだ!!)に加え、新アルバム「エジプト・ステーション」の収録曲3曲を加える豪華39曲。2万人のファンがその音楽性を再認識した!

ここではコンサートでもセレクトされた新アルバムの和訳を特別にご披露。

Who Cares Paul McCartney

A-one, a-two

ワン、ツー

Did you ever get hurt
By the words people say
And the things that they do
When they’re picking on you

人が言った言葉や
人がからかい半分に
やった事に
傷ついた事はある?

Did you ever get sad
By the games that they play
When they’re making you feel
Like a rusty old wheel

人の戯れ事のせいで
悲しくなった事はある?
錆びた古いホイールみたいな
気持ちにさせられて

That’s been left in the rain

雨の中に置き去りのホイールみたいに

Who cares what the idiots say
Who cares what the idiots do
Who cares about the pain in your heart
Who cares about you
I do

バカが何を言おうと誰が気にかける?
バカが何をしようとどうでもいいのさ
誰が君の心の痛みを気にする?
誰が君を気にかける?
僕は気にするよ

‘cos you’re worth much more
Of that you can be sure
No need to hide
The love you’ve got inside

君ははるかに価値がある
それは間違いない
隠す必要なんてない
君が内に持っている愛を

Did you ever get lost
In the heart of a crowd
And the people around
Keep on pushing you down

人込みの真ん中で
途方に暮れた事はある?
押し倒されそうに
なりながら

Is it driving you mad
And you’re screaming out loud
And you’re wondering who’s
Going to recognise you

それで気が狂いそうになったりする?
大声で叫んだり
誰が自分に気付いてくれるだろうと
思ったりして

You’re a ghost in the dark

君はまるで闇の中の亡霊

Who cares what the idiots say
Who cares what the idiots do
Who cares about the pain in your heart
Who cares about you

バカが何を言おうと誰が気にかける?
バカが何をしようとどうでもいいさ
君の心の痛みを誰が気にする?
誰が君を気にかける?

Who cares what the idiots say
Who cares what the idiots do
Who knows about the pain in your heart
Who cares about you
I do

バカが何を言おうと誰が気にかける?
バカが何をしようとどうでもいいのさ
君の心の痛みなんて誰に分かる?
誰が君を気にかける?
僕は気にするよ

You’ve been left in the rain

雨の中に置き去りの君

 

未だ衰えない音楽力

年齢のことはミュージシャンに無関係だ。だが、ポールが76歳だとはいまだに私は信じられない。Beatles時代の澄み切った高音は、夜中、摩天楼の間をかっとばしていく一台のハーレーのような、低音にとってかわり、そのポエティックな歌詞は健在だ。ポールのキックしていくそのリズム感にいつしか体が自然に動き出す!

-Who Care-の若者の傷ついた心への想像力は、どこから湧いてくるのだろう。ポールの中の湖はまだ静かで深いに違いない。ポールがいつまでもポールであることを祈って、ここではポールのきっての名曲について少し書いてみる。

1987年に村上春樹「ノルウェーの森」が世にで大ヒットしたとき、ポールは今より31歳若かった(そういう計算になる)。1970年にグループが解散し、その10年後、レノンがニューヨークの自宅前で凶弾に倒れ世を去った。1987年にはポールは音楽的スランプに陥り、ジョージ・ハリスンのビルボード1位を横目に雄伏していた(それもエルビス・コステロの共作で世界的ヒットに返り咲くまでだが)。

1987年というと日本はバブル期の真っ盛りで、みんな陽気だった。俵万智の「サラダ記念日」が世を席巻し、ビートたけしはフライデーを襲撃し、オウム真理教ができた。尾崎豊は覚醒剤で、日本赤軍の丸岡修も逮捕された。どことなくみんな元気でご機嫌で不安だった。そういう時代だったんだ。そのなかでひときわ目立ったのが村上だ。何かを失っている、何を喪失したのか、そう世に問うた。

「飛行機が着地を完了すると禁煙のサインが消え、天井のスピーカーから小さな音でBGMが流れはじめた。それはどこかのオーケストラが甘く演奏するビートルズの「ノルウェイの森」だった。
そしてそのメロディーはいつものように僕を混乱させた。」

桁違いの読書家である村上は多くをその海外文学からの素養からはぶりだす。おそらく、紅茶に混ざった一片のプチット・マドレーヌから、すべての記憶が鮮やかになる、あの「失われた時を求めて」から着想を得ているのではないかと想像するのは自由だろう。では、その「ノルウェイの森」とはどんな歌詞なのだろう。

I once had a girl
Or should I say she once had me
僕は女の子のを引っかけた

それとも彼女が僕を引っかけたと言うべきか

She showed me her room
Isn’t it good Norwegian wood?
彼女は僕を部屋に招いた

「素敵なノルウェー調のお部屋でしょ?」

She asked me to stay
And she told me to sit anywhere
彼女は僕に泊まるように言って

好きな場所に座るように促した

So I looked around
And I noticed there wasn’t a chair

部屋を見回したけど
椅子なんて無かった

I sat on a rug biding my time
Drinking her wine
しかたなく絨毯に腰を下ろし
彼女がくれたワインを飲みながら
チャンスを待っていたんだ

We talked until two and then she said“ 

It’s time for bed”
夜の2時までおしゃべりした後、彼女は言ったのさ「もう寝なきゃ」

She told me she worked
In the morning and started to laugh
彼女は朝に仕事があると言って
笑いだした

I told her I didn’t

 And crawled off to sleep in the bath
僕は仕事なんて無いって言ったけど
結局僕はバスルームで寝る事になった

And when I awoke I was alone 

This bird had flown
目を覚ますと、僕は一人

小鳥は逃げてしまったのさ

So I lit a fire
Isn’t it good Norwegian wood?
僕は火をつけた ノルウェー製の木材は素敵だね?

どことなく、とぼけたところのあるその歌詞は、どう読んでも「ノルウェーの森」ではないだろう。ただ、最後のフレーズSo I lit a fire Isn’t it good Norwegian wood? は「言葉遊び」で、ノルウェーの森とも読み取れるように「設計」されたのかもしれない。日本でいう「掛詞」であって、同じ音に二つのイメージをだぶらせるその「ポエティック」な歌詞を村上春樹は読み取ったのかもしれない。ノルウェーの森で女の子といたって不思議じゃないだろう? そしてそもそも、大切なのは文学であって、「ノルウェーの家具」より「ノルウェーの森」がふさわしいのならNo worry about the details/小さいことは気にするなよ/なのかも。そんな新説をここで提案しておく、これについてはさまざまなことが言われている。

村上自身はこう言っている。「ジョージ・ハリスンのオフィスのアメリカ女性の証言。Knowing She would(やらせてくれるぜ、あの女は)からごろをかけて、「ノルウェーの森」にした」と。実際、ノルウェーの森の邦題は東芝音楽工業のディレクターがつけたそう。世には「ノルウェーの家具」なんて曲はそもそもなかったのかも。

時代はあの伝説の時代に回帰する

ところで、ポールしかりQueenしかり、トレンドに鋭い洋楽ファンの熱視線が少し懐古寄りになっているようだ。後者は2014年から北米ツアー、その後2016年に来日公演をしている。ともに、Japan Love、を掲げ、劣らぬ人気を再確認する機会となった。もしかしたら、3.11もそのモチベーションの一つだったかもしれない。チャリティー・アルバムに名をつらね、震災時にはすぐにアクションしている。Queenにかんしては来日したのが31年前だから、奇しくも「ノルウェーの森」発売の年だ。みんな年をとったが、前衛にいる。

洋楽界はThe Beatlesのプロモーターのトニー・カルダーを失った、デヴィット・ボーイも、チャック・ベリーも、ホイットニー・ヒューストンも、プリンスも僕たちを残していってしまった。マイケル・ジャクソンの死が遠い昔のように感じる。そのなかで、ポールたちの頑張りはなにかこみ上げるものを感じる。その音楽は彼らの肉体が無とかしても残るだろう。だが神々しいまでのそのカリスマ性をこの目で見たい、そう思わせてくれる僕たちの彼ら。その音楽にはそのときの自分の魂の一部が残っていて、まるで「ノルウェーの森」のようにふいに僕たちの元に戻ってくる。「おい、そんなふうに生きていていいのかい? あのときのヒートアップを思い出せよ」と。

 

ライター:島袋櫂

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